金融緩和とは
景気が後退した際に、投資や消費を促すために中央銀行が行う金融政策の一つです。
本記事では、2016 年に導入された「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の中身を理解することを目指します。
長短金利操作付き量的・質的金融緩和とは
目的
景気を回復させるのが目的なのですが、具体的には物価上昇率 (= インフレ率) を 2% に安定させることが主たる目標です。
歴史
アベノミクスを発端とする大胆な金融緩和策の変遷を見てみましょう。日付は、当該金融政策の導入が決定された金融政策決定会合が実施された日です。
- 量的・質的金融緩和 (2013年4月4日)
- マネタリーベースを 2 年で 2 倍にするという内容。
- 異次元の金融緩和と呼ばれた。
- マイナス金利付き量的・質的金融緩和 (2016年1月29日)
- マネタリーベースの増加に加え、マイナス金利 (短期金利) の導入が決定された。
- 長短金利操作付き量的・質的金融緩和 (2016年9月21日)
- 操作目標に長期金利が加わった。
このように金融緩和の内容が少しずつ発展していることが分かります。ここからは、導入された緩和策の順に中身を見ていきます。
量的金融緩和
量的金融緩和とは、世の中に出回る お金の量 を増やすのが目的です。ここでのお金の量とは マネタリーベース のことで、以下の総和です。
- 日本銀行券発行高 = 市中に出回る紙幣の総額
- 貨幣流通高 = 市中に出回る硬貨の総額
- 日銀当座預金 = 市中銀行が日本銀行に預けているお金の総額
日銀が市場から資産を買い入れる 買いオペ を行うことで、マネタリーベースを増やします。マクロ経済学では、マネタリーベースが増加すると物価が上昇すると考えられています。詳しく知りたい方は「信用乗数」や「フィッシャーの交換方程式」で調べてみてください。
質的金融緩和
質的金融緩和という言葉が単体で存在するわけではありません。量的金融緩和を質的にバージョンアップしたものが、量的・質的金融緩和です。市場から資産を買い入れるのが量的金融緩和なわけですが、以下の 2 つの意味で質的にバージョンアップさせています。
- 買い入れ対象資産の多様化
- 長期国債
- ETF
- J-REIT
- CP
- 社債
- 長期国債の平均残存期間の長期化
また、長期国債を買い集めることで長期国債の価格が上昇し、国債利回り (=長期金利) が低下します。金利が低下すれば資金調達がしやすくなり、設備投資などの投資や消費が活性化されることが期待されます。
短期金利操作
2016年1月に導入されたのが マイナス金利 です。日銀当座預金を以下のように 3 層に分け、上澄みのほうにマイナス金利が適用されました。つまり銀行は日銀当座を持ちすぎると損することになります。すると準備率 (どれほどのお金を日銀に預けているか) が低下し、市中によりお金が出回ることになります。
また、このマイナス金利は短期金利を低下させる働きも持っています。銀行としては、余分に日銀に預けるよりは、低い金利でも良いから運用したほうが得だからです。
長期金利操作
最後に長期金利操作ですが、これはすでに登場しています。長期金利が 0% 程度で推移するように長期国債を買い入れます。
まとめ
長短金利操作付き量的・質的金融緩和とは、物価上昇率 2% を達成するための金融緩和策で、マネタリーベースの増加と長短金利の低下の 2 つの方策からなります。